岩手雨中濡歩記 (いわてあめのなかぬれあるき)

平成12年5月2日・3日



     達谷窟
5/2
6:10



8:42
上野発の新幹線に乗り込む。 
GWであっても5月2日は平日とあってか、乗客は少ない。

一ノ関に到着。 
ここからローカル線に乗り換える。 なんだか、年寄りがやけに多い。
9:15 平泉到着。
数年前に来た時は、交通がないので達谷窟まで歩いたものだったが、今回もやはりバスがない。 しかたなくタクシーに乗り込む。
前回は歩いた旨を話すと、驚いていた。 また、運転手さん曰く、地元の人たちは自分たちを鬼の子孫であると誇りに思っているとの事。
9:25 道々、運転手さんの観光案内を聞いているうちに達谷窟到着。 帰りのタクシーいるかと聞かれたが、お断りしておいた。 名刺だけ貰っておいた。
”拝観料いくら”の掲示がないのでふらふら入っていくと、住職らしいのに呼び止められてしまった。 受付でお守り買って参観料を支払ってから、鳥居をくぐる。
達谷窟
鳥居

佛守護童子

  右手のお堂へ続く道に童子像がある。 これは鬼族の”童子”ではなく、仏教に○○童子とあるような使い走り坊主である。 ちなみに、この種類としては、「西遊記」猪悟能八戒が後に浄壇使者と呼ばれるものがある。
達谷窟
毘沙門堂1

 

悪路王・赤頭・高丸ら蝦夷が山塞とした窟。 山を堀りこんだような要塞である。
安達が原・鬼婆もそうであったが、鬼というものは巨岩の下に巣くうのが好きなものなのだろうか。

達谷窟
毘沙門堂2

  岩にめり込むようにして建てられた毘沙門堂。 蝦夷を征伐した坂上田村麿は、後に、毘沙門天をこの地に祭る。
立て札に長々と説明文があったが、読まずにカメラに収めておく。 最近のデジカメの解像度は非常に良く、後で見てみるとちゃんと文字が読めるのがすごいし便利でもある。
10:00 壁佛・弁天堂などをひと通り観て、達谷窟を後にする。 ここから歩いて平泉駅を目指す。
タクシーを使わなかったのには訳がある。 実は、駅までの道程に面白いものがあるのだ。
東北のGWは桜の季節。 ここの枝垂れ桜は美しいものだ。
枝垂れ桜

姫待瀧

  悪路王らは、都からお姫様をさらってきた後、ここらで花見を楽しんだという。 こんな枝垂れ桜を愛でていたのだろうか。
脱走を図ったお姫様を待ち伏せしたこの滝を、のちに”姫待瀧”と呼んだそうだ。
近くには道祖神を祭る石碑がごろごろしている。
  逃げようとしたお姫様の黒髪を切り、この石に掛けて見せしめにしたところから、”かつら石”という。
巨石を割って、木が生えている。
右下にみえる人物(老人)は、こんなところでヨモギを採っていた。
五月五日に備えて、ヨモギ餅でも作るのだろうか。 我々鬼族にとっては恐るべし老人。
かつら石

  この時期は田んぼにはちょうど水を張ったところである。 水面に映った向こうの景色は、なんとも言えない。
田んぼの畦にはつくしが群れていた。
今年初めて見るつくし。 東京に居るとこんなものでも珍しいものだ。
記念に撮影しておく。
つくしんぼ

道祖神
(雷神)

  この地には沢山の石碑が見られる。
民俗学を学んでいる私にとっては非常に興味深いところなのだが、ひとつひとつ見て回っていたらいくら日にちがあってもきりがない。 
あぁ、現地の人がうらやましい。 私なら研究の対象にしていただろうに。
11:00 達谷窟を出てから約一時間。 漸く駅の近くまで戻って来た。
ちょっとトイレに行きたくなったので、拝観料払って毛越寺で一休み。
しっかし、ここはいつ来てもつまらないところだ。 ”庭園が美しい”以外になにもない。
小便も済ませたことだし、中尊寺へでも行くか。
毛越寺

11:55 途中食事を済ませて、中尊寺へ。
ここへ来たならやっぱり金色堂を見なければ。 高い入場料を払って拝観。
何時見ても、黄金とはいいものだ。
ここでは撮影厳禁のはずなのだが、時々フラッシュが焚かれた。
どこにでも、こういう人間がいるものだが、それを見逃す学芸員の人、情けないぞ。 仕事してくれ。
  お待ちかね、”御開帳”です。
中尊寺秘仏・一字金輪佛頂尊坐像。
やはり高い入場料を払って拝観。
すでに説明が始まっており、みなさん前の方で正座して拝聴していた。
後ろで正座してしまうと仏像が見えないので、終始私ひとり後ろで突っ立っていた。
係員の人に睨まれてしまった。




13:27
中尊寺をぐるりと回ったので場所を移動。 とりあえず水沢方面へ向かいたい。
うまい具合に時刻が遅れているバスがあったので乗り込む。
目指すは江刺・水沢。

 
 


     江刺・水沢
13:50 バスに揺られること30分、水沢駅に到着。 だか、1時間近く電車がない。 次のバスすらもない。 
タクシーが閑そうしにているので、捕まえて、豊田の城跡までと行き先を告げた。 「よく、豊田の館(タチ)と読めましたね。」 ”シロアト”と言ったのだが。 私の名前が豊田なので、と訳の分からない事を言ってやり返す。
  しばし沈黙・・・も束の間、運転手さんの猛反撃が始まった、

 「江刺市の人口3万人に対し、水沢市は6万人。ところが水沢市の面積は江刺市の6倍の面積がある。 これから行く江刺はこの前まで駅のない市だったのだが、水沢市が新幹線を誘致した際、江刺にもかかるので、じゃぁ一緒にやるかと言う訳で”江刺水沢駅”が誕生した<以下省略>」

 
口を挿むどころではない。 うんざりしながら目的地まで聞いてやる事に。
14:10 タクシーに解放されて、漸く豊田の館跡へ。
藤原清衡の館があったとされる場所。 「あったとされる」にはつきものの石碑があるのみ(写真中央)。
ここで写真を撮っていると、向こうで農作業している婆さんに不審そうに見られた。 こんな旅をしているとよくあることだが。
豊田館跡

  日本中どこにでもある愛宕神社。
この柵の場所から向こうの掘っ立小屋(社)まで移転したとある。
小山の上にあるので、眺めが良い。 トイレもあるので、しばし休憩。
そして近くにある諏訪神社へ向かう。
豊田館跡
愛宕神社跡

14:30 途中、ガキんちょと早歩き競争になったが、無事到着。
しかし、ここにはなにもなかった。
寂れた神社がひとつあるのみ。
しばらくすると、先程追い抜いたガキんちょと婆さんがやって来た。 ただお参りして行っただけだった。
さて次は・・・
  バスがない。 どこへ行くにも次のバスは1〜2時間待ち。
さて、どうしたものか。
少し遠いが、鎭岡神社へ行ってみよう。
鎭岡神社

14:50 延喜式内社。 主神は大国主。
藤原清衡の篤い加護があったらしいが、今はその面影もなし。
この鎭岡(シヅメガオカ)神社、鬼に関することで何かあったのだが、忘れてしまった。 何があったかなぁ〜。
寂れてしまってなんにもないけれど。
15:30




15:45
2km程歩いて3ヶ所目のバス停でバスを待つ。 ここにくるまでのバス停では、水沢方面には行かない。

江刺市の真中でバスを降ろされてしまった。 終点であった。 駅まではまだかなりある。 周囲を歩き回って別のバス停を捜し、乗り込む。
16:05



16:40
やっと水沢駅に到着。 しかし、20分は電車が来ない。

北上駅に到着。 本日のお宿があるところである。


     北上
16:50 少し早いがチェックイン。
荷物を部屋に残して、まずは民芸工房「鬼のいぬ間」へ向かう。
このお店、非常にたのしい物が売っている。 しかもそんなに高くない。
和紙で出来た面や便箋・おもちゃなどなど。 おもわず買ってしまったのがアテルイの面。 和紙の便箋もおまけしてくれた。 ラッキーッ!
紙製面
翁とアテルイ

18:00 よるのごはんはなんにしよう。 
ホテルのレストランで食べようと思ったら、なんと今夜一晩貸切。 仕方がないのでまた外に出る。
適当なお店に入り、”うな重”と”日本酒”を頼む。 が、あまりおいしくなかった。 お酒残しちゃった。 もったいない。
  ここのホテルには珍しく大浴場がある。 人が少ないのを見計らって入浴。 だれもいない大浴場でおよぐ、なんて気持ちがいいんだろう。
18:40 風呂から出て、さてお待ちかね、BS-2のPRINCEのライブのはじまり。
ひさびさに見た殿下のお姿。
CDはほとんど持っているのだが、”My name is PRINCE”以来MTVを見ていない。 堪能させていただいた。
この夜はなかなか寝付けなかったのは言うまでもない。
20:00 持ってきたPRINCEのCDを聞いていたが、疲れたので消灯。
5/3
8:10




8:45
この日は雨。
早すぎたかな、と思ったがチェックアウト。 とりあえず駅でカレーでも食べて時間調整。

タクシーを捕まえて、今日のメインディッシュ・鬼の館へ。
  運転手さんとまた観光ばなし。 この地方のタクシー運転手はしゃべりだしたら止まらない。 誰か止めてくれ。到着後、呼んでくれれば迎えに来ると、名刺をもらうが、こちらにはさらさらその気はない。 ここまでの料金から想像すると、帰りの運賃はおそらく五千円くらいになるだろう。
8:59 博物館”鬼の館”。 9時開館で少し早いのだが、入れてくれた。
鬼研究者にとっては非常にたのしいところである。 この地方の情報が豊富。 ここへ来てから岩手鬼探訪するのもいいかも。
入場者は、私のほか家族一組のみ。
ここでも人がいないものだなぁ。
鬼の館
パンフレット

9:45







9:55
一回りしたので帰ることにする。
受付のお姉さんに帰りの交通を聞くと、バスがあるとの事。 時刻は、乗れるか乗れないか、という時間。
兎に角、ダッシュで飛び出す。 

が、タッチの差でバスは行ってしまった。 つぎのバスまで約2時間。
外は雨。  しくしく・・・









11:10
とりあえず歩いて駅を目指すが、足取り重い。 所々バス停が見えたが、待ち時間1時間以上。
雨の中、すっかり濡れ鼠状態で、歩き始めてかれこれ1時間、バス停を発見。 待ち時間約15分。 これを待つことにする。
念願の駅行きバスに乗り込んで、ほっと一息。
11:30 北上駅に到着。
手にもったお面一式が濡れていないか非常に気になるところ。
雨の中の徒歩行で、身も心も疲れ果てる。 お土産を買う気にもならない。
15分後の電車でさらに北上。
   


 
 て   そ   来   け   ら   た   そ   旅   が   む       
  `  の   な   て   え   と   こ   人   住   か       
 手   約   い    `  て   こ   で   に   ん   し       
 形   束   こ   二   三   ろ   人   悪   で    `      
 を   の   と   度   ツ    `  々   さ   お   羅       
 押   し   を   と   石   神   は   を   り   刹       
 さ   る   誓   こ   に   は   神   し    `  と       
 せ   し   わ   の   縛   鬼   の   て   村   い       
 た   と   せ   地   り   を   祈   い   人   う       
   ° し   た   に   付   捕   っ   た   や   鬼       
           °                   °             

     岩の手形
12:40




13:05
盛岡駅到着。 コインロッカーにお土産など荷物を突っ込んで身軽になっての行動。

”いわて”語源になった三ツ石神社の前まで、タクシーを乗りつける。
外の雨はだいぶ小降りになってきた。
三ツ石神社1

三ツ石神社2

 

神社由来によると、この大岩に鬼を縛り付けた、とある。
それらしく鎖が括り付けてあったりするが、これは演出。

三ツ石神社
鬼の手形

 

鬼に二度とこの地を踏まぬよう約束させた証拠の手形。
私のほか、老夫婦が見学に来ていたが、この手形に気付かぬまま去っていった。
岩の間で写真を撮っただけで満足したのだろうか。 由来の立て札はしっかり見ていたはずだが。




13:35

14:20
見るとこ見たので、東京へ帰るべく、盛岡駅へぶらぶらと。
途中遅めのお昼ご飯を摂取。

駅構内でお土産を物色。 今回の土産にはアルコールはなし。 重いから。
15:05



18:00
新幹線で一路東京へ。


まるで私の帰りを待っていたかのように、家に着くなり豪雨。
なにはともあれ、五体満足無事帰家。
おつかれさまでした。

更新日2000/05/20